管財ビギナーズ

-本当に初めて破産管財人をするあなたへ-

大阪地方裁判所(本庁)で初めて管財人を受任した場合に気をつけるべきことを掲載していきます。
他庁(堺支部、岸和田支部を含む。)では運用が異なる部分も多くありますので、ご注意ください。
ここに記載した方法が唯一無二の方法ではありません。
実際に、裁判所の運用も時々刻々と変化しています。
大阪地裁の管財事件では、管財人と裁判所の協同によって新しい運用を作ってきたという経緯もあります。
今後も管財人の創意と工夫でさらなる運用改善を図っていく必要がありますが、まずは現時点でのスタンダードな運用で迷うことがないようにとまとめたのがこのページです。

目次

開始決定

管財事件受任の打診

第6民事部(破産部)の書記官から電話がかかってきます。
書記官からは、「管財事件ですが、受任していただけますか」と打診があります。
多忙でなければ、「受任できます」と回答しましょう。
続いて、「記録閲覧をお願いしたいのですが、いつがいいでしょうか」と聞かれますので、都合のいい時間を答えます。
時間があれば、すぐに行った方がいいでしょう。
ただし、午後0時15分から午後1時までは昼休みですし、午後5時15分以降も勤務時間外となるので、閲覧の時間も考えると、午後0時からや午後5時からの時間は避けましょう。
第6民事部の一般管財係は、新館の10階にあります。
書記官の名前と申立人名を電話口で再度確認しておきます。
1件目は、多くの場合、個人の破産者で異時廃止が見込まれる事案です。
念のため、個人か法人か、夫婦併存や法人併存でないかを確認しておいてもいいでしょう。
裁判所に行く際には、書記官に渡す名刺を忘れないようにしましょう。
また、高価品保管口座(管財人口座)をどの銀行のどの支店に作る予定かを聞かれますので、事務員と打ち合わせておきます。

裁判所での記録閲覧

記録閲覧の場所

受任の打診があったら、6民の書記官室で記録を閲覧します。
一般管財の書記官室は、新館の10階にあります。
カウンターで、打診の電話で確認した担当書記官に声をかけて、申立人名、自分の名前を告げます。
カウンター奥の机に通され、記録を渡されます。

記録閲覧の目的・ポイント

記録閲覧の主な目的は、利害関係の有無のチェックです。
債権者一覧表や財産目録を見て、利益相反が生じないかを確認します。
ざっと報告書にも目をとおし、何がポイントかを確認してもいいでしょう。
また、係属中の訴訟一覧表から、急ぐ事情がないかも確認します。
開始決定後は、「破産手続開始等の通知書」の発送など、事務員の作業が極端に増えます。
債権者一覧表から債権者数を確認し、開始決定日とともに事務員に伝えておくと、事務所内で仕事の輻輳を避けることができるでしょう。

記録閲覧後の書記官とのやりとり

利益相反のおそれがなければ、担当書記官に声をかけ、利害関係に問題がなく、受任できることを伝えます。
留保型(配当すべき財産がなく、債権調査が実施されない。最初の事件は多くがこちらでしょう。)か、期日型(配当が見込まれ、債権調査を実施する。)かや、裁判所が考えている換価や免責についての問題点について、書記官から伝えられることが多いですが、なければこちらから質問してもいいでしょう。

期日調整

書記官から、開始決定の日や、債権届出期間末日(期日型の場合)、免責意見の締切日、財産状況報告集会(第1回債権者集会)の日時の調整がなされます。
開始決定の日や免責意見の締切日は、通常はあまり重要ではありません。
しかし、給与の差押えがなされている(またはそのおそれがある)ときや、法人の場合で滞納公租公課庁が売掛金等を差し押さえるおそれがあるときは、開始決定を早くする必要がないか、書記官と相談してみましょう。
債権届出期間の末日は、その後の財産状況報告集会までに債権者表を整えることができる十分な期間があるかよく考えましょう。
破産債権者による補正や追完資料の提出を求めることが多いですから、あまり時間がないと苦しくなります。
免責意見の締切日は、管財人の業務にはあまり影響がないので、書記官の決定に任せておけばいいでしょう。
財産状況報告集会の日時は、事前に書記官が申立代理人の予定を確認してくれていますので、その場で確定させることができます。
一般管財の債権者集会は、毎週月曜日と木曜日の午後2時、午後2時30分、午後3時、午後3時30分です。
午後3時30分の期日は、配当後の任務終了集会用ですので、財産状況報告集会には指定されません。
指定された期日は、忘れないようにその場で訟廷日誌などに書き込んでしまいましょう。

管財人の住所等の伝達

初めて管財を受ける場合は、管財人の氏名の表記や住所の確認が必要となります。
普通は、書記官に名刺を渡せば足ります。
また、高価品保管口座(管財人口座)をどの銀行のどの支店で開設するかを伝えておきます。

表紙部分の受取り

記録の表紙部分(事件名や上で決まった期日等が記載されたもの)をコピーしてもらえますので、受け取っておきます。

申立代理人との引継日等調整

電話での調整

記録閲覧後、書記官から申立代理人(申立関与司法書士)に、管財人候補者が決まったことを伝え、引継ぎのための連絡を促す電話があります。
ですので、通常は申立代理人から管財人候補者への電話連絡を待ちます。
ただ、2,3日たっても申立代理人からの連絡がない場合は、管財人候補者から電話した方がいいでしょう。
申立代理人とは、事件の引継ぎについて調整を行います。

調整内容

具体的には、

  1. 引継日
  2. 申立書副本の引継ぎ方法
  3. 原本類の引継ぎ方法
  4. 予納金の引継ぎ方法

を決めます。

引継場所・出席者

引継ぎは、管財人の事務所で行います。
申立人(破産者)と申立代理人が同席します。
したがって、引継日の調整時には、破産者の出席を確保できるように依頼します。

申立書副本、原本類の引継ぎ

副本は、申立代理人から直送を受けます。
裁判所から受け取ることはありません。
引継日にスムーズに事件を引き継ぐためには、引継時までに記録を精査しておくことが重要です。
ですので、副本は、早めに持参または郵送してもらうよう、お願いしておきます。
副本は早めに送付を受け、原本類は引継日に引き継ぐことが多いようです。
なお、副本と一緒に申立書データと開始決定通知に用いるための宛名シールの送付を受けることになっていますが、申立代理人が失念されていることもあります。
失礼とならないように気をつけながら、確認をしておきましょう。

予納金の引継ぎ

予納金は、引継日に現金を持参してもらうか、管財人口座作成後(開始決定後になります)に振り込んでもらうかのどちらかを選択します。

引継ぎの時期

引継日を開始決定前にするか、開始決定後にするかですが、本来、管財事件の引継は開始決定前になされるのが原則です。
しかし、個人の破産者の場合、自由財産拡張の判断の基礎資料として、開始決定後に記帳された通帳によって開始時の預金残高確認する必要があります。
ですので、特に問題のない事件で、通帳原本でこれを確認するのであれば、申立代理人(または破産者本人)が記帳したものを持参できるよう、開始決定後数日を経過した時点とするのがよいでしょう。
何らかの急ぐ事情がある場合や、信頼できる申立代理人で、記帳後にFAX送信を受けて確認する方法をとる場合、いったん通帳を預かって管財人が(または預かった通帳の一時返還を受けた破産者が)開始決定後に記帳する方法をとる場合、開始決定前に引継日を設定しても不都合は生じません。
開始決定後の引継時に通帳原本で確認するのであれば、申立代理人に開始決定後の記帳をお願いしておきます。

開始決定後の初動

開始決定の受領

開始決定後に、裁判所書記官室で開始決定を受け取ります。

開始決定は通常午後5時ですので、翌日以降に受け取るのが普通です。

事務所の態勢にもよりますが、事務員が受領するのが一般的です。

事件ごとに封筒にまとめられた一式が、かごに入れられて一般管財のカウンターにおいてあります。

ゴムバンドで受書がいっしょにとめられていますので、これに記名・押印し、提出用のレターケースに投函します。

一式を持ち帰って、開始決定の送付などの作業を行います。

特に書記官に声をかける必要はありません。

一式に入っている書類は、「運用と書式」96頁で確認してください。

持ち帰ったら、開始決定に誤記がないか(破産者の氏名・住所、管財人の氏名・事務所住所、期日等)に誤記がないか確認します。

なお、現在、氏名にフォントにない外字で用いられている場合も、開始決定等は類似の文字で表記されています。この点は気にする必要はありません。

開始通知の発送(債権者)

開始決定後に、「破産手続開始等の通知書」を発送します。

本来は裁判所がすべき事務を、管財人事務所が代行していることになります。
ですので、開始決定時に受領した裁判所の封筒を使って発送することになります。

封筒には切手を貼る必要があります。

留保型の場合は84円切手で足ります。
しかし、期日型の場合、「破産債権届出書」や「破産債権の届出の方法等について」を同封しますので、94円切手を貼る必要がないか確認しましょう。
(もっとも、事務所で使用するコピー用紙の重さにもよります。)。

予納金205,000円のうち5,000円は、これらの郵便代として用いる趣旨で引き継いでいます。
(もっとも、事件終結時までに郵便代を5,000円まで使用しなくても、返還したりする必要はありません。)。

同封する書類や発送先は、「運用と書式」97頁を参照してください。

なお、「破産手続開始等の通知書」は1通だけしか裁判所から受け取りませんので、コピーを同封します。
開始決定(やその写し)を同封する必要はありません。

宛名シールは、申立代理人から引き継いだものを使用します。

債権者一覧表と照らし合わせて、漏れがないか、会社名(氏名)・住所に間違いないかを必ずチェックしましょう。

公租公課庁や許認可庁は、宛名シールにはないことが多く、発送を忘れがちですので、気をつける必要があります。

宛名シールが不足する場合、申立代理人に用意してもらうこともありますし、数枚程度であれば管財人事務所でシールを作ったり、封筒に直接記載したりして対応することもあります。

なお、実務上、財産所持者(銀行や保険会社、売掛先)には、開始決定通知を送ることはあまりありません。

ポストや郵便局への投函は、管財人事務所で行います。

裁判所内郵便局である必要はありません。

発送後、6民に「知れている債権者等への発送報告書」をFAXすることを忘れないようにします。

裁判所の封筒は、若干の余裕をみて一式に入れてあるはずです。

管財手続き中に新たな債権者が発見され、追加で開始決定通知を発送することもあります。

したがって、開始時の通知等をして封筒が余ったとしても、少なくとも事件が終了するまでは裁判所に返還する必要はないでしょう。

開始通知の発送(公租公課庁)

債権者宛の通知と同じく、管財人事務所が発送を代行します。

公租公課庁は、宛名シールにはなく、発送を忘れがちですので、気をつける必要があります。

債権者一覧表(滞納公租公課一覧表)に記載された公租公課庁には、必ず送付します。

また、被課税公租公課一覧表や税務申告書をチェックして、発送すべき公租公課庁に漏れがないか確認します。

もっとも、個人の場合、その後も経済生活を営むわけですから、滞納していない公租公課庁に送付しないよう気をつけます。

間違って送ってしまうと、納期限が繰り上げされてしまい、破産者が無用な不利益を受けることがあります。

裁判所の封筒に切手貼付してからポストに投函することを忘れないようにします。

投函は、裁判所内郵便局である必要はありません。

開始通知の発送(許認可庁)

初めての管財事件で許認可が関係する事件はあまりないですが、許認可庁がある場合、債権者宛の通知と同じく、管財人事務所が発送を代行します。

許認可庁も、宛名シールにはなく、発送を忘れがちですので、気をつける必要があります。

許認可庁は、個人の場合は「管財補充報告書」で確認します。

法人の場合は、「報告書(法人用)」です。

裁判所の封筒に切手貼付してからポストに投函することを忘れないようにします。

投函は、裁判所内郵便局である必要はありません。

郵便回送嘱託書の発送

債権者宛の開始決定通知と同様、管財人事務所が郵便回送嘱託書の発送を代行します。

開始時に受け取った裁判所の封筒のうち、窓付封筒を利用します。

封筒に既に回送嘱託書が入っています。

破産者の氏名・住所などの表記や事件番号が開始決定と同一か、郵便局の支店が申立書添付の「管財補充報告書」と同じかを確認して封緘します。

封筒には「料金別納」と印刷されていますが、切手を貼るのを忘れないようにします。

投函は、裁判所内郵便局である必要はありません。

商業登記嘱託書の発送

初めての管財事件では個人の破産事件が多いですが、法人の場合、管財人事務所が法務局に商業登記嘱託書の発送を代行します。

開始時に受け取った裁判所の封筒のうち、窓付封筒を利用します。

封筒に既に回送嘱託書が入っています。

破産者の商号・住所、事件番号などの表記が開始決定や全部事項証明書と同一かを確認して封緘します。

封筒には「料金別納」と印刷されていますが、切手を貼るのを忘れないようにします。

投函は、裁判所内郵便局である必要はありません。

管財人印・管財人口座の届出

開始決定受領後、一式に入っている管財人印・管財人口座届出書(「運用と書式」433頁)2項の枠内に管財人として用いる印鑑を押印し、3項に管財人口座を開設する予定の金融機関の住所、商号、支店名を記載して、6民のレターケースに投函して提出します。

管財人口座の開設に管財人証明が必要となることが多いことから、管財人印の届出→管財人証明の作成→管財人口座の開設という順序にならざるを得ず、上記の届出書は口座開設に先だって提出することになります。

管財人証明の作成

開始決定と一緒に受け取った一式に、書記官印が押印されている管財人証明用紙が数枚入っています。

これに届出印を押印し、管財人証明とします。

管財人証明は、管財人の資格証明、印鑑証明となります。

訴え提起などのときに用います。

管財人証明が不足したら、担当書記官に電話で連絡して、用紙をレターケースに入れてもらいます。

なお、不動産の任意売却に際して法務局に提出する印鑑証明は、管財人の選任日が記載された不動産登記用の管財人証明(「運用と書式」CD-ROM資料408)に管財人印を押印した上で、書記官印を押してもらいます。

管財人口座の開設

開始決定受領後、速やかに高価品保管口座(管財人口座)を開設します。

開設する金融機関は、弁護士業務で使用する預り金口座と同じところなど、事務所の最寄りで事務局の便宜なところに定めるとよいでしょう。

管財人口座の開設に必要な書類は、金融機関ごと、支店ごとに異なります。

例えば、ある都市銀行の支店では、

  • 破産手続開始決定書
  • 管財人証明書
  • 管財人の免許証
  • 事務員の免許証
  • (法人の場合)登記事項証明書(写)
  • (個人の場合)住民票の写し(写)

を準備し、預金口座の新規開設用紙とともに窓口に提出することが必要とされています。

普通預金口座とするか決済用普通預金口座とするかは、管財人の裁量に委ねられています。

後者は、預金利息がつきませんが、金融機関破綻後も全額が保護の対象となります。

財団が1000万円を超える場合は、後者の利用も検討する必要があるでしょう。

管財人口座の名義は、「破産者○○○○破産管財人△△△△」とします(「運用と書式」96頁)。

破産者名の読み仮名は、申立書のふりがな欄や従前の通帳のふりがなで確認します。

キャッシュカードを作成することも可能ですが、あまり実益はないでしょう。

なお、口座開設時に10円程度の預金を求められる銀行があります。

すでに引継予納金を受け取っている場合はこれを入金すれば足ります。

そうでない場合は、管財人が立て替えておいて、最終的に精算します。

この場合の収支計算書の書き方については、後記を参照して下さい。

なお、近時は、口座の開設に事前予約が必要で、開設までに時間がかかることも多いので、開始後直ちに開設に着手するようにします。

通常事件係属裁判所への連絡(掲載予定)

執行事件係属裁判所への連絡(掲載予定)

申立代理人からの引継ぎ

引継場所、引継日時、出席者は前記を参照ください。

引継時までに引継ぎを受けた記録は精査しておきます。

引継時には、破産者や申立代理人からの事情の聴取りと破産者への手続の説明が中心となります。

また、事前に引き継いでいなかった原本類の受け渡しや、場合によっては引継ぎ予納金を現金で受け取る場合もあります。

事情の聴取りは、事前に引継ぎを受けた記録上の疑問点だけでなく、記録にあらわれない点も確認します。

引継ぎ時点では、財団の管理、換価、自由財産の拡張や免責の判断に必要な範囲でポイントを絞って行えるようにします。

換価では、特に危機時期前後の財産の動きが中心となることが多いでしょう。

法人や個人事業者の場合は、従業員や許認可、継続的契約の処理がなされているかも確認しておく必要があります。

自由財産拡張の関係では、その場で開始決定後に記帳された預貯金通帳等を確認し、拡張に問題がないと判断したら、その場で破産者(又は申立代理人)に通帳や保険証券、賃貸借契約書、車検証、自動車の鍵等は返してしまいましょう。

自動車を拡張する場合は、管財人が以後の運行供用者責任を負わないよう、破産者から受領書を受け取っておきます。

免責観察型の場合は、家計簿のつけ方を説明し、月に1回程度の面談日を決めます。

この面談は、破産者のみの出席で足り、申立代理人に同席してもらう必要はありません。

免責観察型で予納金が分納のときは、誓約書の提出を受けます。

なお、破産債権者やその有する債権は、債権調査の時点で聞けばすみますので、あまり最初の引継時には気にする必要がないことがほとんどです。

破産者への説明は、

  • 破産手続開始決定が出たこととその意味
  • 管財人に選任されたこととその職責
  • 破産者には管財人に対する説明義務があること
  • 申立書に記載漏れがあれば、非免責債権となることの防止や財産隠匿を疑われないようにするため、早めの説明を要すること
  • 郵便物が転送され、内容を検めること
  • 引越しや長期の旅行に行く場合は、裁判所の許可を要すること

などとなります。転送郵便物の受渡し方法も、このときにつめておきます。

スケジュールの立案(掲載予定)

その後の事務

住所変更

破産者が住所を変更する場合、裁判所の許可が必要となります。

申立代理人が許可申請を行うこととなりますが、許可に先立ち、管財人の同意を要します。

通常は、申立代理人の起案した許可申請書に同意欄を設け、管財人が記名・押印します。

住所変更後の住民票の提出は、許可申請の事前・事後のいずれもありえますが、申立代理人が提出を忘れないように促しておきましょう。

特に、不動産の任意売却を行う場合、登記申請時に破産者の住所変更登記が必要となります。

不動産登記用の管財人証明にも変更後の住所を記載することと成りますので、裁判所と管財人が住民票を確認できることが不可欠だからです。

自由財産拡張(掲載予定)

換価

換価の方針(少額の財産)

少額の財産を換価するか放棄するかは、次のような事情を総合的に考慮します。

最初に、換価によってどの程度の財団の増殖が見込めるかです。
これは、財産の価額だけではなく、相手方の資力や、訴訟になった場合の勝訴可能性なども考慮します。

次に、換価にどれぐらいの時間がかかるかです。
他の財産の換価に要する時間を併せて考えます。
つまり、当該財産の換価に相当程度の時間がかかるとしても、必ず換価しなければならない財産の換価にそれ以上の時間を要するのであれば、当該財産は換価する方向でのベクトルが働きます。

さらに、配当可能性も検討材料となります。
時間を要して換価しても、結局管財人報酬に潰えるのであれば、あまり換価に拘泥する必要はないでしょう。
債権者としても、債権管理のコストを考えると、配当がないのであれば早期に破産手続が終結することにメリットを見いこともあるからです。

具体例で見てみましょう。

例えば、額面が1万円の売掛金があるとします。

相手方が任意で支払わない場合、訴訟を検討しますが、注文書や納品書・請求書の控え、帳簿などもないときには、訴訟維持が困難なこともあります。
また、そのような事情がなくとも、相手方も既に事業を停止しており、財産もわからなければ、判決を得たとしても強制執行で回収することは難しいでしょう。

このような場合に、財団が予納金の20万円しかなく、他に換価可能な財産がなければ、時間をかけて仮に回収に成功したとしても、管財人報酬が増えるだけです。
それよりも、売掛金を放棄して早期に異時廃止とすることの方が、総債権者の利益に合致するでしょう。

他方、上記のような事情があったとしても、他にたくさんの売掛金があって、訴訟提起が必要であれば、これらと併せて提訴することも検討します。
判決を得ても結局回収できないかも知れませんが、ときには判決後に任意の支払を受けることもありますし、また、判決を得ても(場合によっては強制執行を試みても)回収できなかった、ということが放棄までに管財人として再選を尽くしたという証拠となり得るからです。

不動産(共有持分)の放棄

財団に属する財産が換価できないなどの理由で財団から放棄する場合、100万円を超える価値のある財産であれば、裁判所の許可を得る必要があります。

許可の方式としては、

  • 業務要点報告書に放棄すべき財産を記載しておき、債権者集会で裁判所の口頭の許可を得る方法
  • 許可申請書を提出して許可書を得る方法

の2通りがあります。

もっとも、不動産(又は共有持分)を放棄する場合は、100万円以下であっても、許可申請書を提出するようにします。

なお、不動産の放棄に先だって別除権者に通知すべきとされています(「運用と書式」154頁)。
法律上の規定は法人の場合だけですが、個人の管財事件でも同様に通知した方がいいでしょう。

現金を受領した場合

財産を換価して現金を受領した場合、速やかに管財人口座に入金します。

口座に入金せずに管財人事務所で現金保管し続けたり、立替事務費と差引き精算したりすることは絶対に避けましょう。

債権者集会

業務要点報告書の提出

業務要点報告書の提出は、債権者集会の1週間前を厳守します。

提出はFAXで足ります。

提出する書類は、

  • 財産状況報告書
  • 財産目録
  • 収支計算書
  • 管財人口座の写し
  • 免責に関する意見書(個人の場合)

の5点(法人の場合は4点)です。
ただし、個人の場合も、免責に関する意見書は1回しか提出しませんので、4点となることもあります。

記載要領は、「運用と書式」108頁以下を参照してください。

業務要点報告書ひな形の別紙(「運用と書式」477頁以下)には、詳細なサンプルの記載がなされています。
しかし、ここまで詳しく書く必要はありません。
開始時に裁判所からポイントして指示されたことがあればそれに対する応答や、残務があればその現状、財産目録や収支計算書では伝わらない換価状況、管財人として苦労したことや工夫した点などを記載すれば足ります。

管財人口座の写しは、提出の直前に記帳し、財産目録や収支計算書に反映させます。
写しは、表紙、見返し部分と、1頁目から記帳されている最終頁までを提出します。

財産目録の回収額と収支計算書の収入の部、収支計算書の通帳残高と管財人口座の残高に齟齬がないか確認します。

収支計算書の収入の部の記載順序は、入金順でも財産目録の項目順でも構いません。

支出の部ですが、初めての管財の規模の事件であれば、事務費は全て管財人が立て替えておき、最終段階で精算することが多いでしょう。

この場合に、あまり詳細に支出の部を書く必要はありません。
「事務費(立替)」としてまとめてしまっても不都合ないといえます。

口座開設にあたって少額の入金を管財人が立て替えた場合の収支計算書の記載方法は、両建て(収入の部、支出の部のいずれにも記載する)で記載しても、全く記載しなくてもどちらでもいいでしょう。

事前準備

債権者集会当日に債権者が出席した場合に備えて、配付資料を数枚用意しておきます。

管財人によって配付資料は異なりますが、1件目の管財事件であれば、収支計算書程度で十分でしょう。

転送郵便物を破産者に引渡す機会ですので、事務所に保管してある転送郵便物をまとめておきます。

破産者の出頭確保は申立代理人が行うことが通常です。

しかし、申立代理人が失念されている場合もありますので、引継時などに日時と出頭が必要であることを確認しておいた方がいいでしょう。

債権者集会当日

新館の9階で開催されます。

エレベーターを降りて左側の部屋で受付を行っています。
扉を入って左側のテーブルが債権者の受付、右側のテーブルが破産者、管財人の受付です。
右側のテーブルで、破産者名と管財人の氏名を告げて、受付を済ませます。

受付の部屋の前に当日債権者集会が開催される事件一覧表が掲載されています。
できれば、そこで整理番号を確認しておくと、スムーズに受付を済ませることができます。

受付が完了したら、隣の待機部屋で順番を待ちます。

破産者・管財人がそろった順に債権者集会が実施されます。

開催時間間際は受付も混雑します。
ですので、時間には少し余裕をもって到着するようにします。

待機部屋では少し時間がありますので、破産者・申立代理人が到着したら、転送郵便物を引渡したり、簡単に経過を報告しておいてもいいでしょう。

順番が来たら、マイクを通じて破産者名で呼び出されますので、指定された債権者集会室に入ります。

通常は、待機部屋の隣にある債権者集会室において、1室に3ブースのいわゆるスリートップ方式での債権者集会となります。

マイクで呼び出されてもすぐには集会となりません。
債権者集会室にも後向きに並べられた椅子がありますので、そこで順番を待ちます。

順番が来たら書記官が破産者名を呼び上げますので、指定されたブースに移動します。
テーブルの奥の向かって右手が裁判官席で、管財人はその隣に着席します。

まず、裁判官から、出頭者が確認されます。

破産債権者が出席していなければ、管財人からの報告は簡略化されます。
裁判官から、報告は提出されている書面のとおりですね、免責については○○という意見ですね、と投げかけられます。
特に補足すべきことがなければ、はい、と応えておけばよいでしょう。

免責意見書は提出したものの、破産者の協力を促すために免責意見を述べるのは先の集会期日にしたい場合は、その旨を伝えるようにします。
このようにした場合、先の集会期日で意見を述べることを忘れないようにします。

集会で裁判所の許可を得て財産を財団から放棄することもできます。
事前に財産状況報告書に記載しておくことが必要です。
集会で放棄予定の財産がある場合、裁判官から確認がありますので、これに応答します。
裁判官は口頭で放棄許可をなし、調書にその旨が記載されます。

配当事案で債権調査を実施する場合も、裁判官から、事前に提出された債権者表のとおりですね、と問われますので、はい、と応えておきます。

今回の集会で事件が異時廃止となる場合は、その場で裁判官から異時廃止決定と報酬決定を受け取ります。

本庁では、管財人は免責決定は受け取らない運用となっています。

集会が続行となる場合は、その場で次回期日を決めます。
ですので、どのくらい先に次回期日を入れればよいか、事前に考えておきます。
あと少しで換価が終了する見込みであれば、換価完了後に次回期日を入れるようにします。
3か月以上換価に時間がかかるようであれば、適宜の時期に次回期日を入れます。

破産者も債権者集会に出頭することが原則です。
しかし、破産者の換価等への協力が必要なく、免責意見も既に述べている場合は、次回以降の出頭を免除してもいいでしょう。
この場合は、集会期日において裁判官にその旨を伝えます。

通常の債権者集会の期日は、月曜日か木曜日の午後2時、午後2時30分、午後3時のいずれかです。


配当後の任務終了報告集会(任了集会)は、通常、午後3時30分に指定されます。
任了集会は、誰も出席しないのが通例です。
管財人も事務所に待機し、もし破産債権者が出頭した場合に裁判所に駆けつけられる体勢を整えておけば足ります。

破産債権者が出席している場合は、丁寧に債権者集会が進行します。

裁判官から最初に破産者本人からの挨拶を促されることもあります。

管財人は、準備していた資料を配付し、開始決定後の経緯と財産の換価状況、配当の見込みを説明します。
説明は要領よくポイントを押さえ、手短に行います。

また、裁判官から破産債権者に質問等がないか聞かれます。
破産債権者からの質問があれば、簡潔に回答します。
議論になってしまう場合や、手持ちの資料だけでは正確な回答ができない場合は、事務所から改めて連絡すると適宜切り上げたほうがいい場合もあるでしょう。

なお、債権者集会を進行する裁判官はランダムに決められており、事件の担当裁判官とは限りません。
債権者集会の場で事件の内容について裁判官と相談したりすることは期待できません。

破産債権者が多数出席している場合は、スリートップ方式ではなく、別の集会室で債権者集会が実施される場合もあります。
この場合も、書記官の誘導にしたがって移動します。

出席者多数の事件は、破産債権者の関心も高いといえますので、管財人からの報告も丁寧に行います。

現在、本庁で実施されている集団債権者集会は、複数の事件について集団的に債権者集会を行うものです。
当該集会で異時廃止となる事案で、破産債権者が出頭しておらず、出頭した当事者に反対がない場合が対象とされています。
債権者集会室に移動し、横並びの椅子に、申立代理人、破産者、管財人の順に並んで座ります。
基本的に裁判官が集会を進行しますが、免責意見については、管財人から直接隣にいる破産者に説諭することを促されることもあります。
集会が終了したら、異時廃止決定と報酬決定を受け取ります。

財団債権

交付要求の受領

大阪地裁本庁では、公租公課(税金・社会保険料など)についての課税庁(税務署、府税事務所、市税事務所、市役所、年金事務所など)からの交付要求のうち、財団債権についての交付要求は管財人事務所へ直送され、優先的破産債権についての交付要求は裁判所に送付されることになっています。

しかし、神戸地裁などの他庁では、優先的破産債権についての交付要求も管財人事務所に直送されることになっています。
このため、大阪地裁管内以外の課税庁から、優先的破産債権についての交付要求が管財人事務所に到着することがあります。

調査型で既に債権届出書綴りを受け取っている場合は、そのまま綴ってしまえばいいのですが、これ以外の場合は、裁判所に届けます。

交付要求とともに副本が送付されてくる課税庁もあります。
同封されている場合は、受領書となるものですので、押印の上、返送します。
他方、同封されていなくとも、特に送付を求める必要はありません。

また、破産者本人宛の交付要求通知書については、交付要求とともに(または同時に)管財人事務所に直送する課税庁もあれば、破産者の住所宛に送付されたものが転送郵便物として管財人事務所に届く場合もあります。

交付要求通知書は管財手続上必要となるものではありませんので、本来通知書を受け取るべき破産者に渡してしまってもいいですし、破産者において必要となることは原則ありませんので、管財人が保管し続けてもいいでしょう。

債権調査

債権届出書綴りの受領

債権届出期間満了の3日後の午後以降に、第6民事部の一般管財係(新館10階)に赴き、担当書記官に声を掛けて債権届出書綴りを受け取って来ます。

本庁では、債権届出書は正本1通しか提出を求めていません。
ですので、絶対に紛失しないように注意しましょう。

債権届出書綴りには、破産債権者から提出された破産債権届と優先的破産債権の交付要求が、それぞれ提出順に綴じられています。

担当書記官が表紙とともに紐綴じしてくれている場合が多いですが、表紙と順番に並べた債権届出書の束、綴じ紐の状態で手渡される場合もあります。
後者の場合、散逸しないようにすぐに綴じ紐で表紙とともに綴じてしまいましょう。

破産債権者が送付に用いた封筒も、一緒に綴じてしまいます。
受領後、債権届出書の右下にある裁判所受付番号に一連の番号を振ります。

一般破産債権は1から、優先的破産債権は101から始まる番号を振るのが一般的です。

配当

配当の準備

換価が終了したら、後倒しにしていた債権調査を実施するとともに、財団債権の弁済を行い、管財人報酬決定を受けます。

後二者は、配当との関係でいえば、配当原資を確定させるためです。

どれを先にしなければならないということはなく、平行して作業を進めてもかまいません。

財団債権の弁済ですが、配当に進む場合は、全額を支払うことができますので、公租公課について減免申請を忘れないようにします。

裁判所に管財人報酬を求めるにあたっては、業務要点報告書を提出する場合と、管財手続連絡メモを送る場合とがあります。管財人報酬を求める時期や報告の内容によって使い分けています。

簡易配当の場合、債権者表を裁判所に提出し、書記官が債権者表をチェックした頃に、簡易配当進行表のひな形と参考スケジュールが記載された進行表案がFAXされてきます。

進行表案を参考にしながら、法定期間の末日や配当実施日などが祝日にかかっていないかや、現実にそのスケジュール案ですすめることに支障がないかを検討し、簡易配当進行表にそれぞれの期日を記載して、裁判所にFAXします。

なお、月末やいわゆる五十日(ごとび)は金融機関が混み合いますので、それを避けるようにスケジュールを組んだ方がいいでしょう。

配当許可申請・配当表の起案

債権者表の修正が不要なことの確認や、財団債権の弁済を完了し、報酬決定を受けたら、配当許可申請書と配当表を起案します。

起案する順番は、

  1. 配当許可申請に添付する収支計算書
  2. 配当表
  3. 配当許可申請本体

がやりやすいでしょう。

すでに報酬決定を受けていますから、収支計算書の収入の部は、原則として変動がありません。

支出の部には、弁済した財団債権や、管財人報酬、配当費用の予定額を記載します。

管財人報酬は、このときまでに現実に引き出す必要まではなく、配当実施時や管財人口座の解約時に受け取っても構いません。

ただし、破産者が法人の場合、管財人報酬の源泉徴収とその納付を忘れないように注意が必要です。

配当費用の予定額は、配当通知の郵送費用と配当に際しての振込手数料です。
破産債権者が指定する金融機関によって振込手数料が変わってきますが、あまり厳格に考えず、管財人が配当を行う金融機関の最大の振込手数料を基礎に計算すれば足ります。

収支計算書を整えれば、実際の配当可能額が算出できます。
これをもとに、配当表を作成します。

債権者表のタイトル欄の「■破産債権者表」のチェックを□にし、また、同欄の「□配当表」と行タイトルの「□配当関係」のチェックをそれぞれ■にします。

また、債権調査の結果に基づき、「配当の手続に参加することができる債権の額」欄に金額を記入します。

不足額が確定していない別除権付債権は、認めている債権であっても0円となりますが、これ以外は、確定債権額の金額を転記します。

異議の述べた債権についても、0円と記入します。

配当参加可能債権額が確定したら、優先的破産債権(公租)、同(公課)、同(労働債権などの私債権)、一般破産債権、劣後的破産債権の順に配当額を割り付けていきます。

劣後的破産債権まで配当できることは通常なく、一般破産債権までの配当となることがほとんどです。

割付に際しては、まず、各クラスの配当率を定めます。

全額配当できるクラス(通常は優先的破産債権の各クラス)の配当率は、100%となります。

これに対して、按分とならないクラス(通常は一般破産債権のクラス)については、そのクラスに配当することができる原資を、配当手続に参加することができる債権の総額で除したものが配当率となります。

配当率は、適宜の桁数で端数処理を行います。四捨五入、切捨て、切上げのどれでもかまいません。

こうして定まった配当率を、配当表右下の配当率の欄に記入します。

各クラスの配当率を算出できれば、配当手続に参加できる各債権の額に配当率を掛け合わせ、配当額を計算します。

配当額の小数点以下の端数処理も、四捨五入、切捨て、切上げのいずれか適宜の方法を取ります。

この金額を、配当表の「配当することができる金額」欄に記入します。

なお、Excelで計算している場合、表示されている数値は四捨五入されているものの、実際にセルが保持している金額は四捨五入前の数値であることがあります。

端数処理を行わないまま計算すると、違算が生じる可能性があります。

Round関数やRoundup関数、Rounddown関数などでその都度端数処理を行うことが必要です。

また、現実の配当額の総額と配当可能原資とは完全に一致しませんが、現実の配当額の総額が配当可能原資を上回り、配当原資が不足しない限り、厳密に考える必要はありません。

配当表を作成したら、配当許可申請書を起案します。

1項は収支計算書から、2項は破産債権者表から転記します。

根抵当権で極度額を超える部分がない場合、2項のひな形のなお書きと添付書類のうち「2 別除権(根抵当権)に関する報告書」は削除します。

3項の「配当をすることができる金額」は、ひな形では「財団の現金総額より御庁の報酬決定額を控除した額と記載されています。

1項で支出欄に管財人報酬を含めて記載してる場合でも、この文言はそのままとします。

後に追加配当が発生する場合があり、これを控除しているからです。

配当許可申請・配当表の提出時期

通常のスケジュールでは、債権調査期日後1週間以内に配当許可申請を提出することになっていますが、債権調査期日までに債権者表の書記官チェックが済めば、期日前に配当許可申請を提出することも可能です。

ただし、この場合、配当許可申請や配当表の日付は、債権調査期日以降の日(その当日付でも大丈夫です)にします。

もっとも、異議の述べた債権について、破産債権者が査定申立てをしてくる可能性がある場合には、配当許可申請は査定の行方が確定するまで控えておいた方が無難でしょう。

また、配当許可申請を配当表は、同時に提出することが通常です。

配当通知の発送

配当許可を得たら、当初に定めたスケジュールに従って、配当通知を各破産債権者に発送します。

全額異議を出している破産債権者に対しても、配当通知を発送する必要があります。

配当通知後、裁判所に、配当通知書のサンプルを添付した配当通知到達届出書をFAXで提出します。

簡易配当進行表には、配当通知到達届出日の記載がありますが、届出書の提出をこの日まで待つ必要はありません。

逆に、この日より後に届出書を提出してしまうと、除斥期間や配当表に対する異議申立期間がすべてずれてきてしましますので、注意が必要です。

ですので、配当通知を発送したら、速やかに届出書を提出することが好ましいといえます。

配当表の更正(掲載予定)

配当の実施

事前に、振込手続を行う金融機関(通常は管財人口座を作成している銀行の支店)で振込伝票や集金伝票を入手しておき、必要事項を記載しておきます。

配当が完了すれば、管財人口座は必要なくなりますので、解約してしまって構いません。

残高は、管財人の事務所で現金保管します。

配当後の事務

裁判所に配当実施報告書を提出します。

また、任了集会後に書記官から連絡がありますので、裁判所で配当表に職印を押印します。

免責

免責決定

最後の債権者集会の数日後に、免責に関する決定が裁判所からなされます。

大阪地裁本庁では、少なくとも免責が許可される場合は、管財人に免責決定書が交付されることはありません。

債権者からの問い合わせ

異時廃止(または終結)後に、破産債権者から免責が出たか否かの問い合わせがなされることがあります。

多くは、会社の経理上の処理のために必要とされるようです。

大阪地裁本庁では、管財人には免責許可決定が交付されず、免責の有無を正確に知ることはできません。

ですので、免責の有無の確認が必要であれば、申立代理人に問い合わせるように案内します。

もっとも、異時廃止決定をFAXすることで足ることありますので、破産債権者にその旨を確認してみましょう。

手続終了後の事務(掲載予定)

破産者とのやりとり(掲載予定)

裁判所とのやりとり

書面の提出方法

FAX送信で足るもの

  • 知れている債権者等への発送報告書
  • 新たに知れたる債権者等への発送報告書
  • 業務要点報告書
  • 管財手続連絡メモ
  • 財団債権弁済報告書
  • 簡易配当進行表
  • 配当の通知に係る届出書
  • 配当実施報告書
  • 任務終了の計算報告書

原本の提出が必要なもの

  • 届出書(管財人印・管財人口座)
  • 債権者表(押印は不要)

原本と副本の提出が必要なもの

  • 許可申請書
  • 許可証明申請書

レターケースでのやり取り

裁判所との書類のやりとりのうち、原本の受け渡しが必要となるものは、書記官室に設置されたレターケースを利用することが大部分です。

提出用のレターケースは、書記官室(新館10階)の一般管財係のカウンターの上に置かれています。

係ごとに区分けされていますので、担当係のケースに提出書類を投函します。

受取用のレターケースは、同じカウンターの下に設置されています。

ア行から順に区分けされていますので、管財人名の該当ケースから書類を受け取ります。

ときどき誤って破産者名の該当ケースに投函されていることもありますので、受け取るべき書類が見つからないときは、そちらを確認してみてもよいでしょう。

提出時、受取時ともに、必要がなければ担当書記官に声をかける必要はありません。

電話でのやり取り(掲載予定)

記録・資料の管理

申立書副本

申立書副本は、管財人候補者となったあと、開始決定までの間に申立代理人から受け取ります。

受取り方法は郵便、事務所への持参、レターケース経由のいずれでもかまいません。

申立代理人が失念していると思われるときは、問い合わせてみましょう。

管財事件の場合、同廃の申立てと異なり、裁判所に提出される申立書は、債権調査票や預金通帳などの疎明資料のほとんどないシンプルなものです。

そのかわり、管財人は、申立書副本と併せて疎明資料のコピーを引き継ぐことになっています。

開始決定までには、副本や管財人疎明資料のコピーを受け取り、読んでおくことが必要です。

なお、原本類の引継ぎは、破産者や申立代理人が事務所にきて事件を引き継ぐ際に行うのが一般的です。

もちろん、その時点にこだわる必要はありません。

転送郵便物

開始決定後、破産者宛の転送郵便物が管財人事務所に転送されてきます。

転送の都度開封し、内容を確認します。

新たな債権者や漏れている財産がないかが確認のポイントです。

破産者が法人の場合は、事件終結時に他の記録とともに処分することとなります。

破産者が個人の場合、管財業務に必要なもの以外は破産者に返還します。

返還の方法は、

  • 破産者が事務所に取りに来る
  • 申立代理人にある程度まとめて引き継ぐ
  • 債権者集会の際にまとめて破産者に渡す
  • 切手を預かっておき、適宜破産者宛に郵送する

などの方法が考えられます。

破産者宛に郵送する場合は、管財人事務所への転送を防ぐため、封筒に、「破産管財人からの郵便物のため、転送不要」と朱筆するか、同居の親族を宛先として郵送します。

預かった切手は、事件の収支に組み込む必要はありません。

しかし、事件終結時に余った切手を返還することを忘れないようにしましょう。

いずれの方法をとる場合も、急ぎの郵便物がある場合(特に、社会保険の任意継続は締切が切迫していることが多いです。)、破産者に連絡を取り、受け取りを促す必要があるでしょう。

なお、転送郵便物は郵便局である程度たまった段階でなされるため、本来到着しているべき時期から少し時間をおいて管財人事務所に届くことが多いようです。

破産者に対しては、引継時に上記のような事情を説明し、返還方法を詰めておく必要があります。

特に年賀状は、転送時期が管財人事務所も年末年始の休暇と重なるため、返還が遅れてしまうことも十分に説明しておきましょう。

事務所の態勢

事務局との役割分担

管財事件では多数の事務作業や関係者とのやりとりが発生します。

管財人と事務局との役割分担は、管財人ごと、事務所ごとに千差万別だといえます。

どのように分担していくかは事件を重ねるごとに徐々に形作っていけばいいでしょう。

もっとも、1件目の管財事件では、管財人本人もできるだけ事務作業をともに行い、どのような事務があるのかを把握するように努めることをお勧めします。

一般的には、事務局の作業は次のようなものがあります。

  • 記録のファイリング
  • 裁判所提出書面のチェック
  • 裁判所への書面提出
  • 郵便物の発送
  • 管財人口座の作成、出金、解約
  • 経理
  • 転送郵便物の開封
  • 定型的な電話対応(債権者からの問い合わせ・業者等)
  • 不動産任意売却時の必要書類チェック
  • 不動産全部事項証明等必要書類の取寄せ

経理・管財人報酬

現金の管理

財団に属する現金の管理のため、開始決定後、速やかに管財人口座(高価品保管口座)を開設します。

管財人口座を開設後したら、引継予納金や財産の換価によって生じた現金は、すぐに管財人口座に入金します。

現金でまま事務所に保管し続けたり、通常業務で使用している預り金口座に入金すると、不正を疑われたり、遺漏が生じる原因となります。

したがって、このような処理は絶対にしないようにします。

ただし、不動産の任意売却における手付金については、決済までは財団の収入となることが不確定であることから、預り金口座で保管する管財人もいます。

経費の支出

郵便代や交通費の支出など、管財業務では種々の経費が生じます。

その都度管財人口座から出金して使用することも可能ですが、手間がかかります。

したがって、小口の出金は管財人が立て替え、最後に精算することが通常です。

業務要点報告書添付の収支計算書も、これを前提にひな形が作成されています。

管財人口座から先に小口現金を出金しておき、過不足を最後に精算する方法は行われていません。

財団債権の弁済

公租公課などの財団債権を弁済する場合、管財人口座から出金し、弁済を行うことが通常です。

出金するにあたって、裁判所の許可などは必要ありません。少額の場合は、経費と同じように管財人が立て替え、最後に精算することも可能です。

管財人報酬

管財人報酬は、裁判所の報酬決定により定められます。
異時廃止で財団債権の按分弁済もない場合は、最後の債権者集会において、異時廃止決定とともに報酬決定を受領します。
異時廃止で財団債権の按分弁済を行う場合(優先的破産債権に対する簡易な弁済を行う場合を含みます)、維持廃止後にこれらの弁済を行うこともありますが、債権者集会前に報酬決定を得ておき、集会までに按分弁済を済ませることもあります。
後者の場合には、業務要点報告書や打合メモなどで裁判所に按分弁済実行のために報酬決定を得たい旨を上申し、報酬決定を受けます。
配当事案では、債権者表提出後に報酬決定を受け、配当手続に進みます。
いずれの場合でも、報酬決定受領時に管財人口座から出金してもかまいませんし、管財人口座解約時に立替金の精算とともに受領してもかまいません。
破産者が法人の場合、管財人に管財人報酬について源泉徴収義務があります(最高裁平成23年1月14日判決。判例は法人の事案です。)。
管財人は、自らに報酬を支払うに際して源泉所得税を天引きし、徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければなりません(所得税法183条、199条、204条)。
破産者がもともと源泉所得税を納付していた税務署に連絡し、納付に必要な書類の交付を受けて納付します。
破産者が個人の場合について、上記判例は述べるところではありません。
破産者本人が事業者以外の個人の場合には、所得税法204条2項2号により、管財人報酬について源泉徴収を要しないとする見解も指摘されています(判例タイムズ1343号98頁)。

終了後の事務

書類の廃棄

管財人が保管し、または破産者に返還する以外の書類は、事件終了後に廃棄することになります。
管財事件の場合、大量の書類が残されることも多くあります。
事務所でシュレッダーにかけることもありますが、信頼のおける廃棄業者に依頼し、溶解処理をした方が、人件費を考えると安上がりなこともあります。

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