個人再生では、通常再生が実質的平等主義をとっている(民事再生法155条1項)と異なり、再生計画上、形式的平等が貫かれています(同法229条1項、244条)。
例外は、
- 不利益を受ける債権者の同意がある場合
- 少額債権の弁済時期
- 開始決定後の利息・遅延損害金
だけです。
2.について、例えば大阪地裁では、1か月あたりの弁済額が1,000円未満の場合がこれにあたるとされています(「事例解説個人再生 大阪再生物語」244頁)。
つまり、弁済期間3年なら権利変更後の弁済総額が36,000円未満、5年なら60,000円未満なら、少額債権として、他の再生債権よりも早期の弁済を定める再生計画案が策定できます。再生計画に基づく弁済が1か月ごとか、3か月ごとかは影響しません。
東京地裁では、特に基準はないようです(「個人再生の手引」273頁)。
もっとも、2.の例外は、「時期」についてだけであり、少額債権者の弁済率を不利益にすることはできません。
では、通常の再生債権者には、再生計画認可確定の翌月を第1回とし、3年間にわたって1か月ごとに弁済する(36回)ものの、少額債権者には、確定の1年後を第1回、2年後を第2回、3年後を第3回とするような再生計画案は認められるでしょうか。
そもそも、少額債権の例外の趣旨は、形式的平等を貫いた場合の再生債務者の過剰な費用負担(具体的には、振込手数料ですね。)を回避するために、少額債権者に対する弁済を早期に終えることができるようにするものです(「一問一答個人再生手続」206頁参照)。
このような例外を法が許容するのは、非少額債権者との関係で実質的な平等を害するとは類型的にいえないからです。
そうすると、上記のような再生計画案は、少額債権者を通常の再生債権者より不利益に扱っているものですので、少額債権の例額の要件を満たさず、不適法となります(「事例解説個人再生 大阪再生物語」245頁、「個人再生の手引」273頁)。
このため、小規模個人再生であれば、再生計画案は付議されず(同法230条2項、174条2項1号)、給与所得者等再生であれば、意見聴取がされません(同法240条1項1号、241条2項1号、174条2項1号)。