放棄後の不動産

破産管財人が換価できない不動産を破産財団から放棄することがあります。
これは、実体的な権利の放棄ではなく、破産者が所有者でなくなるものではありません。
あくまでも、管理処分権が破産管財人から破産者に復帰するにとどまるものです。

自然人の場合であれば、不動産をめぐる権利関係は破産前の状態に戻ります。つまり、抵当権者がいつでも競売を申し立てられる状態です。
抵当権者は、競売を希望するのであれば、破産者を相手方として申立てを行えばよく、任意売却を望むのであれば、破産者と交渉すれば足ります。

これに対し、複雑なのが法人の場合です。特別代理人または清算人の選任が必要となります。
破産手続開始決定によって、代表者がいない状態になるからです(会社法330条、民法653項)。

まず、民事訴訟法が準用される競売手続では、特別代理人が選任されます(民事執行法20条、民事訴訟法35条1項)。
通常、特別代理人の職務は、送達される書類を受領することに尽きます。
そこで、適宜廉価で受ける弁護士を探し出してきて、執行裁判所に推薦することが行われています。

次に、抵当権者が不動産の買受希望者を見つけてきた場合ですが、任意売却のためには清算人を選任することが必要です。
このようなケースでは、いわゆるスポット清算人が選任されています。
本来の清算人と異なり、清算業務全般を行うのではなく、任意売却とこれに付随する業務のみを遂行し、完了次第解任されるものです。
元破産管財人が選任されることが多いようですが、不動産を破産財団から放棄したものの、破産手続自体は終了していない間に任意売却が可能となったときなどは、別の清算人が選任されます。

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