取立権の行使にあたり第三債務者から受領した手形について、民事再生手続開始決定後に支払いを受けることは不当利得となる

大阪高判平成22年4月23日
判時2180号54頁
NBL1007号98頁

「民事執行法上の債権差押命令に基づく取立権は、被差押債権の換価のために差押債権者に認められた権利であって、被差押債権の金銭価値の実現が許容されるにすぎず、転付命令と異なり、被差押債権自体が取立権者に移転するわけではないから、被差押債権自体を譲渡し、免除し又はその弁済を猶予するといった行為については、取立目的を超える行為として、これらを行うことはできないものである。被差押債権の支払に代えて手形を受領し、被差押債権については弁済したものとすることは、代物弁済の合意であり、通常、弁済や弁済提供の法的効果がない手形の授受により被差押債権を消滅させる処分行為であって、取立目的を超える行為に当たることは明らかである。控訴人は、取立権の行使は、現金の受領に限らず、代物弁済の受領をすることも含まれると主張するが、上記のとおりであって採用することができない。そうすると、差押債権者である控訴人と第三債務者らとの間において、被差押債権の支払に代えて本件各手形を授受するという代物弁済の合意をしたとしても、その効力は債務者に及ばないものである。したがって、本件各手形が第三債務者らと控訴人との間において、被差押債権の支払のために授受された場合はもちろん、支払に代えて授受された場合であっても、甲野社に対する関係では、被差押債権は消滅しておらず、控訴人は、本件開始決定後に民事再生法39条1項に反して、債権差押命令に基づく執行として、第三債務者らから金員の支払を受けたというべきである。」

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