東京高判平成25年7月18日
金融法務事情1982号120頁
「不動産クレジットからの債権回収及び日本振興銀行からの融資は、いずれも本件納税保証の対価となる経済的利益にあたるとはいえない。
すなわち、同社からの債権回収は、もともと破産者の責任財産(積極財産)に含まれている同社に対する既存の債権を回収するものであって、これを回収したからと行って、破産者にその責任財産の増加という経済的利益をもたらすものではない。しかも、同社は、既に国税を滞納し、平成21年2月3日、関東財務局長に対して業績不振のんため貸金業を廃止した旨を記載した廃業等届出書を提出し、それ以降は債権の回収程度の業務を行う状況であり(乙11)、同月10日、当局国税局がその資産状況や資金繰り状況等を調査するため破産者(同社の親会社)に臨場して同社の決算調整前の貸借対照表及び損益計算書を調査しても同社は担保となる資産を有しているとは認められなかったのであって、破産者の消極財産となる債務の増加のみを生じさせる行為である本件納税保証を行い、上記状況にある同社に対する滞納処分を当面回避したからといって、それが破産者の責任財産を維持することにあるとも認められない。」
「破産者が日本振興銀行からの融資を受けることも、破産者の積極財産を増加させるものではない。しかも、当該融資は、破産者の説明によっても、平成21年2月10日(火曜日)の時点では、前日に金融機関数行と借入交渉を行い、日本振興銀行から借入交渉に応じるとの回答があったが、検討会が週明けになり、融資の実行は同月19日又は同月20日になる見込みであるとされ、同月13日に本件納税保証がされた後の同月20日(金曜日)の時点においても、同銀行の稟議は取り付けることができたが担保条件が厳しく折り合いがついていないといった状態であり、実現可能性の乏しいものであった。」
「本件納税保証は、破産者が本件小切手1による債務とは別個の、しかも国税債権者に自力執行権や優先徴収権が付与された租税債権を負担することにあるのであって、これが破産債権者を害し、破産財団の価値を実質的に減少させるものである」
「本件納付が破産者によってなされたものであることを認めるに足りる証拠はない。すなわち、平成21年2月10日、破産者の預金口座から保険納付の原資となり得る3億7907万1000円が出金され(甲12の1)、破産者の総勘定元帳には合計額が本件納付額と同額となる「PGS立替分 法人税」の記載がある(甲12の2)が、上記出金がされてその一部がPGSの滞納国税の支払に充てられたとしても、そのことによって直ちに破産者が上記国税を第三者納付したと認めることはできない(例えば、第三者が納税者に納税資金を貸し付け、これによって納税者が納税をした場合であっても、第三者においては自ら立替払いをした旨の会計処理をすることがあり得る。)。そして、本件納付に係る同日付け領収証書(乙43)は、それ自体がPGS以外の第三者が上記国税を納付したことを示すものではなく、しかも破産者に関する記載は一切存在しないのであるから、これをもって破産者が本件納付をしたものと認めることはできない(むしろ、国税通則法41条1項、国税通則法施行規則16条、同規則別紙第1号書式備考7に定める第三者納付の手続がされた形跡がないことからすれば、本件納付はPGSが行ったものと推認される。)。」