給与の天引きと否認・相殺禁止

「破産管財実践マニュアル〔第2版〕」251頁に、給与からの天引きと否認についての記載があります。

やや誤解を招く表現となっていますが、ここで主に想定して述べているのは、地方公共団体が公務員の給与を天引きし、共済組合に払い込んでいる場合です(地方公務員等共済組合法115条2項)。

そもそも、このような法令上の根拠がない場合、勤務先が従業員の給与を天引きし、貸付金の弁済に充当することは、賃金の全額払の原則(労働基準法24条1項)に違反し、無効です。

これに対し、従業員の自由な意思に基づく同意がある場合は全額払の原則に反せず、勤務先は天引きの方法で相殺することが許されるとされています。
しかし、同意が危機時期になされた場合は、従業員の同意の否認が問題となります。

また、同意が危機時期以前になされている場合も、相殺禁止(71条1項3号)を検討する必要があります。しかし、労働契約が危機時期以前に締結されているのであれば、相殺禁止の例外(同条2項2号)に該当する可能性が高いのではないかと考えられます。

タイトルとURLをコピーしました