債権を支払う場合で、その額に小数点以下の数字が生じるとき、考え得る方法としては、
- 切り捨て
- 切り上げ
- 四捨五入
の3通りがあります。
実は、この点も法律の定めがあります。
通常の債権は、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律3条1項により、四捨五入とされています。
国と公庫の債権債務は、同条2項により国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律が特則となり、2条1項が切り捨てを定めています。
通常の債権と国などの債権で取扱いが異なるのですね。
では、債権執行や破産手続での配当の場面ではどう取り扱われているでしょうか。
この場合は、有限の配当原資を平等に分配するために、債権者間でどのように調整するかという問題であるからか、必ずしも上記のような取扱いになっていません。
そもそも、配当原資を按分する際の小数点以下の取扱いの方法としては、上記の1~3に加えて、
- 小数点以下の数字の大きな債権から切り上げ、残りは切り下げ
という方法も考えられます。これだと、1円単位の残りも生じず、配当原資を完全に分配してしまうことができます。
債権執行の場面では、このような方法によるようです(実務債権配当の基本問題」(民事法研究会)179頁)。
破産の配当でも、大阪地裁では以前4.の方法によっていましたが、現在は1~3のどれかによればよく(「新版破産管財手続の運用と書式」(新日本法規)287頁)、東京地裁でも同様なようです(「破産管財の手引」(きんざい)317頁)。
きれいに配当しきる必要性が高い債権執行と異なり、その後の事務費などで誤差を吸収しうる破産管財手続では、計算の簡易性を優先しているのですね。
Excelで配当表をつくるときに、どのような関数でこの計算を実現するかは、いずれまた。