福岡地判平成25年10月28日
判例時報2211号87ページ
「破産法164条1項は、権利の変動について対抗要件を充足する行為が、既に着手された権利の変動を完成するものであることに鑑み、権利変動の原因となる法律行為そのものに否認の理由がない限り、できるだけ対抗要件を具備させることによって当事者に所期の目的を達成させることとするとの趣旨から、同項所定の要件を満たす場合にのみ、特にこれを否認し得ることとした者と解される(平成16年法律第75号による廃止前の破産法(大正11年法律第71号)74条に関する最高裁昭和44年(オ)第1061号同45年8月20日第1小法廷判決・民集24巻9号1339頁参照)。
そして、登記の更正は、権利に関する登記に登記官の過誤による錯誤又は遺漏がある場合に、①登記上の利害関係を有する第三者の承諾があるとき又は②当該第三者がないときに限り、登記官によって職権でされるものであるから(不動産登記法67条2項、1項)、権利変動の原因となる法律行為を前提としてされるものではなく、また、登記の更正の原因となる上記事情も否認の対象となり得るものとはいえない。
そうするであるとすれば、登記の更正は、特段の事情がない限り、破産法164条1項の「権利の…変更をもって第三者に対抗するために必要な行為」に該当せず、同項の対抗要件否認の対象とならないものと解すべきである。」