東京高判平成25年7月18日
判時2202号3頁
【納税保証の否認】
[無償性について]
・破産者による子会社Aからの債権回収は、もともと破産者の責任財産に含まれている既存の債権を回収するに過ぎないものであって、破産者の納税保証によって国税を滞納する子会社Aからの債権回収が可能となったとしても、破産者に責任財産の増加という経済的利益をもたらすものではない。
・また、本件では、子会社Aは既に廃業し、見るべき財産もない状況にあり、子会社Aの滞納国税につき、破産者が納税保証を行い、子会社に対する滞納処分を当面回避したからといって、破産者の責任財産を維持するものにもならない。
・子会社Aを納税保証することによって、破産者が銀行から融資を受けられることになったとしても、破産者の責任財産を増加させるものではない。
・しかも、本件では、破産者が融資を受けることは実現可能性に乏しかった。
・よって、破産者の納税保証につき、無償性は否定されない。
[有害性について]
・破産者が先行して先日付小切手による委託納付をしていたとしても、同小切手とは別個であり、自力執行や優先徴収権を有する租税債務を負担したのであるから、破産債権者を害し、破産財団の価値を実質的に減少させるものであって、有害性の要件は否定されない。
[第三者納付の否認]
・子会社Bの納付資金を破産者が出捐し、破産者の総勘定元帳に立替の記載があったとしても、直ちに破産者が子会社Bの国税を第三者納付したことにはならない。
・国税の納付にかかる領収書には子会社Bの記載しかないことからすれば、子会社B以外の第三者が当該国税を納付したことを示すものではなく、同領収書に破産者の記載がないのであるから、破産者が同納付をしたと認めることはできない。
・むしろ、国税通則法41条1項、同施行規則16条、別紙第一号書式備考七に定める第三者納付の手続きがなされた形跡がないことからすれば、同納付は子会社Bが行ったものと推認される。
・よって、同納付は破産者の行為ではなく、否認対象行為にあたらない。